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兄さんは最近、綺麗になった。
東方中央図書館へと続く道を、エドワードと歩きながらアルフォンスは思った。
左手にトランクを持ち、右手をポッケットに突っ込んで、少し俯きがちに歩く。そんな兄を、隣からでも見下ろせば、午後の陽光に煌く、彼の旋毛が見える。
兄の気性そのままに、スタスタと進む足に合わせて、金色の一房がゆらゆらと揺れて。
その日差しにも、負けない赤いコート。アンダーの隙間から覗く白磁の肌に黒の上下。
…プラス鎧の僕。
今までも、よく視線を集めてきた。けれど最近の兄さんは、前とは明らかに違う視線を集めている。いや、視線だけじゃなく声も掛けられる。だからこそ僕がちゃんと目を光らせてなきゃ、と思ってる。じゃないと大佐に顔向け出来ない。
大佐と約束したわけじゃないけど。
何でそこに大佐が出てくるかってーと…兄さんの恋人が大佐だから。
イーストシティに寄る度に、美人度が上がる。そんな兄を見てると、僕の心境は複雑だ。けれどまぁ、兄さんが幸せならいいかなと。最近やっと思えるようになったんだ。
でも、だからってコレはいただけない。雑踏に紛れ軟弱な男が数人、アルフォンスの様子を伺っている。自分が目を離す、ちょっとした隙さえあれば、兄さんに話しかけようとしている。睨んでやれば、あっさりと物陰に隠れる。本当にさっきからうざったくて仕方がない。
でもあんなヤサ男達では兄さんを、どう、こうできる訳がない。だから放っておけるんだけど。
でもやっぱりうざいなぁ…。
どうしようかと、アルフォンスがエドワードに尋ねようとした瞬間。
エドワードが後頭部を抑えて、何の前触れもなくいきなり振り返った。
金の眼を吊り上げて、素早く辺りに視線を巡らせる。
「兄さん…また?」
「あ、いや、大丈夫だ。…たぶん」
悪意は感じないから。
そうエドワードは言うのだが、ここ東部に入った数日前から強い視線を感じているらしい。
一瞬だけれど、強烈に後頭部に突き刺さる視線に、他意は感じ取れない。だからこそ余計に気になるというもの。
相手の意図することが読めないのは、苦手だ。逆に真意を測ろうと、そのことばかり考えるようになってしまう。まるであいつの事みたいに。
「大佐に相談してみようよ、兄さん」
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アゲハの冒頭部分。この後エドがストーカーに攫われて、アルが東方司令部に殴りこみに行きます(苦笑←いや、マジで)
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