白い犬の磨き方 ４

　ちまちまと続けてきた話の完結です。
　これも一種のアレン誕。
　Happy　Birthday　アレン。

　次は『粉雪』に取り掛かりたいけど、２５日までに書きあがらなかったら、新刊の方に専念しますね。







　そこでふと、リナリーは思いついた疑問をアレンに聞いてみた。
「そこまで神田とラビがしておいて監査官は何も言わないの？」
　中央から来たアレンの監視者は。
「リンク？リンクはきっと呆れてるんです…」
　僕が止めてくれるように、リンクから頼んでくださいと言っても知らんぷりなんです。
　あげく、「君は自身の事に頓着しなさすぎです。この際だから磨いてもらいなさい、身だしなみは大事です」って、止めるどころか推奨されてしまいました。　　
　ぐったり。
　ついにアレンはテーブルに突っ伏してしまった。思い出しただけで疲れてしまったらしい。
「…まあ！」
　教団との協調性は皆無だとばかり思っていたリナリーは感嘆の声を上げた。
　そして少し温くなってしまった紅茶に口を付けた。
「でも、そう言えばそうね」
「何がですか？」
　考え直してみれば、２４時間の監視だって言っていたリンクが、いくらエクソシストが付くと言っても、恋人同士の時間を大目に見ているなんて、今までではあり得ないことだった。
　中央が軟化したのではなく、これはたぶん監査官の独断で。
　そう考えて、思い出してみれば、最近のリンクのアレンを見る瞳が優しいことに、リナリーは今初めて気付いた。
　のろのろとリナリーの呟きに返事をしたアレンが起き上がる。そして、空になったカップに気づくと、おかわりを注いでくれた。
「うーんとね。二人が任務の時ぐらいは、アレン君だってゆっくりしてるんでしょ？」
　いつもはどうせ、どっちかの部屋で夜更かしさせられてんでしょ？
　その意味も込めて悪戯っぽくリナリーが微笑めば、アレンは少しだけ照れて頬を掻いた。
　どうぞ、とリナリーにカップを渡して。
「僕も神田やラビと離れてやりたいことだってあるんですが、リンクが…」
「彼が何か？」
　まさか襲ってる訳じゃないでしょうね！
　でもだったら、あの二人が気付かないはずないし。
　リナリーはおかしな方向へと思考を暴走させていた。
「リナリー、今おかしなこと考えませんでした？」
「え、いいえ、大丈夫よアレンくん」
　ぶんぶんとリナリーは誤魔化しも込めて大げさに頭を振った。
「最初は取っ付きにくかったんですけど、リンクは優しいですよ」
　最近はちょっと過保護で、親がいたらあんな感じかなって。
　カップを両手で持ってはにかむアレンは、恐ろしく可愛かった。
　なんでこんな顔をさせてるのが、私でも神田でもラビでも無くて、リンクなのかとリナリーは理不尽に怒りを覚えた。
「それがゆっくりしようと思ってたら、ベッドに押し込まれて『休める時に休むのはエクソシストの基本です。早く休みたまえ』って」
　眠たくないんですって言ったら、『私も休みます』って添い寝して髪を撫でてくれるんです。
　それがすっごく優しくて気持ち良くて、うとうとしてるうちにいつのまにか寝ちゃうんですよね。
「僕ってそんなにお子様ですか？」
　神田にラビに、リンクまで。一から十まで世話をやかれなければならない子供に見えるのでしょうか。
　へこんでしまったアレンに、リナリーが紅茶にフーと息を吹きかけて。
「子供としてじゃなく、私も含めてアレン君が大好きなのよ。きっとね」
「ありがとうございます？」
　礼を言ったアレンはそれでも言葉の意味をよく理解してないようだった。
　まあ、もう少しこのままでもいいかと、リナリーは一人微笑んだ。


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　リナリーがリンクの名前を呼ばないのはわざとです。小さいころのルベリエとの確執が、気になっているのでしょうか。